ボイラー技士試験の計算と公式
二級で出る計算は、式に数字を入れれば解けるものがほとんどです。換算蒸発量は実際蒸発量×(蒸気と給水の比エンタルピの差)÷2,257、ボイラー効率は蒸気が受け取った熱量÷燃料の発熱量で求めます。点を落とすのは、単位の桁と、ゲージ圧力と絶対圧力の取り違えです。
圧力の単位換算(MPa・kPa・Pa)構造
1MPa=1,000kPa=1,000,000Pa / 1kPa=1,000Pa
圧力の単位はパスカル(Pa)で、ボイラー則や構造規格はボイラーの圧力をメガパスカル(MPa)で書いています。メガは10の6乗、キロは10の3乗なので、MPaからkPaへは1,000倍、kPaからMPaへは1,000で割ります。
例題
最高使用圧力0.85MPaのボイラーがある。この圧力をkPaとPaで表す。また、2,500kPaをMPaで表す。
- 0.85MPa × 1,000 = 850kPa
- 850kPa × 1,000 = 850,000Pa
- 2,500kPa ÷ 1,000 = 2.5MPa
答え:850kPa(850,000Pa)、2.5MPa
よくある間違い:MPaとkPaの間は1,000倍で、100倍ではありません。桁を1つずらした値が誤りの選択肢に並ぶことがあるので、換算したら元の値と桁数を見比べます。
ゲージ圧力と絶対圧力構造
絶対圧力=ゲージ圧力+大気圧 (標準大気圧=101.325kPa≒0.101MPa)
圧力計が示すのは、大気圧を0とした「ゲージ圧力」です。真空を0とした「絶対圧力」は、ゲージ圧力に大気圧を足した値になります。ボイラー則は最高使用圧力をゲージ圧力で定めています。蒸気表の飽和温度は絶対圧力で引くので、圧力計の値をそのまま使うと温度を読み違えます。
例題
圧力計の指示が0.60MPaのとき、絶対圧力はいくらか。大気圧は0.101MPaとする。また、絶対圧力0.25MPaはゲージ圧力でいくらか。
- 絶対圧力 = 0.60 + 0.101 = 0.701MPa
- ゲージ圧力 = 0.25 − 0.101 = 0.149MPa
答え:0.701MPa(絶対圧力)、0.149MPa(ゲージ圧力)
よくある間違い:法令や構造規格に出てくる圧力(最高使用圧力、鋳鉄製ボイラーの0.1MPaなど)はすべてゲージ圧力です。絶対圧力に直してから比べると、境目を取り違えます。
顕熱と潜熱(比エンタルピ)構造
顕熱 Q=m×c×Δt / 潜熱 Q=m×r (m:質量[kg]、c:比熱[kJ/(kg·K)]、Δt:温度差[K]、r:蒸発熱[kJ/kg])
温度を上げるのに使われる熱が顕熱、温度が変わらないまま水を蒸気に変えるのに使われる熱が潜熱です。1kgの物質が持つ熱量を比エンタルピ(kJ/kg)といい、飽和蒸気の比エンタルピは、飽和水の比エンタルピに蒸発熱を足した値です。大気圧・100℃での蒸発熱は2,257kJ/kgです。
例題
15℃の水500kgを大気圧のもとで100℃まで加熱し、さらに全部を100℃の飽和蒸気にする。水の比熱を4.19kJ/(kg·K)、100℃の蒸発熱を2,257kJ/kgとして、顕熱と潜熱を求める。
- 顕熱 = 500 × 4.19 × (100 − 15) = 178,075kJ
- 潜熱 = 500 × 2,257 = 1,128,500kJ
- 合計 = 178,075 + 1,128,500 = 1,306,575kJ
- 潜熱 ÷ 顕熱 = 1,128,500 ÷ 178,075 ≒ 6.3
答え:顕熱178,075kJ、潜熱1,128,500kJ(潜熱は顕熱の約6.3倍)
よくある間違い:2,257kJ/kgは大気圧・100℃のときの値です。圧力が高くなると飽和温度は上がり、蒸発熱は小さくなって、臨界点(22.064MPa)で0になります。
換算蒸発量構造
Ge=G×(h2-h1)÷2,257 (Ge:換算蒸発量[kg/h]、G:実際蒸発量[kg/h]、h2:発生蒸気の比エンタルピ[kJ/kg]、h1:給水の比エンタルピ[kJ/kg])
給水温度や蒸気圧力が違うボイラーの能力を同じ物差しで比べるために、実際の蒸発量を「100℃の飽和水から100℃の乾き飽和蒸気をつくった場合」の蒸発量に直したものです。割る数の2,257kJ/kgは、大気圧・100℃の蒸発熱です。相当蒸発量とも呼びます。
例題
実際蒸発量3,000kg/hのボイラーで、発生蒸気の比エンタルピが2,780kJ/kg、給水(20℃)の比エンタルピが84kJ/kgのとき、換算蒸発量を求める。
- 1kgあたりに与えた熱量 = 2,780 − 84 = 2,696kJ/kg
- 1時間あたりの熱量 = 3,000 × 2,696 = 8,088,000kJ/h
- 換算蒸発量 = 8,088,000 ÷ 2,257 ≒ 3,583.5kg/h
答え:約3,584kg/h
よくある間違い:かけるのは蒸気の比エンタルピそのものではなく、給水の比エンタルピを引いた差です。引き忘れると3,000 × 2,780 ÷ 2,257 ≒ 3,695kg/hとなり、誤りの選択肢と同じ値になりやすい。
ボイラー効率構造
η=G×(h2-h1)÷(F×H)×100[%] (F:燃料消費量[kg/h]、H:燃料の発熱量[kJ/kg])
燃料が出した熱のうち、どれだけが蒸気に移ったかの割合です。分子は換算蒸発量の式の分子と同じなので、Ge×2,257と書いても同じ値になります。発熱量に低発熱量と高発熱量のどちらを使うかで値が変わるため、問題文が示す発熱量をそのまま使います。
例題
実際蒸発量3,000kg/h、発生蒸気の比エンタルピ2,780kJ/kg、給水の比エンタルピ84kJ/kgのボイラーで、燃料消費量が210kg/h、燃料の低発熱量が42,000kJ/kgのとき、ボイラー効率を求める。
- 蒸気が受け取った熱量 = 3,000 × (2,780 − 84) = 8,088,000kJ/h
- 燃料の発熱量の合計 = 210 × 42,000 = 8,820,000kJ/h
- η = 8,088,000 ÷ 8,820,000 × 100 ≒ 91.7%
答え:約91.7%
よくある間違い:燃料消費量の単位(kg/h、L/h、㎥N/h)と発熱量の単位(kJ/kg、MJ/L、MJ/㎥N)をそろえます。MJとkJの1,000倍の差も見落としやすい。
伝熱量(熱貫流)構造
Q=K×A×Δt (Q:伝熱量[W]、K:熱貫流率[W/(㎡·K)]、A:伝熱面積[㎡]、Δt:燃焼ガスとボイラー水の温度差[K])
燃焼ガスの熱は、ガスから管壁へ(熱伝達)、管壁の中を(熱伝導)、管壁から水へ(熱伝達)と伝わります。この全体の伝わりやすさを熱貫流率(熱通過率)Kで表し、伝熱量は伝熱面積と温度差に比例します。管壁にスケールやすすが付くとKが下がり、同じ燃料を使っても水に伝わる熱が減ります。
例題
熱貫流率40W/(㎡·K)、伝熱面積20㎡、燃焼ガスとボイラー水の平均温度差250Kのとき、伝熱量を求め、1時間あたりの熱量(kJ/h)にも直す。
- Q = 40 × 20 × 250 = 200,000W = 200kW
- 1kW = 3,600kJ/h なので 200 × 3,600 = 720,000kJ/h
答え:200kW(720,000kJ/h)
よくある間違い:温度差は℃で引いてもKで引いても同じ数値です(目盛の幅が同じ)。温度そのものをKに直すときだけ273.15を足します。
空気比燃料・燃焼
m=A÷A0 (A:実際空気量、A0:理論空気量) / m≒21÷(21-O2) (O2:乾き排ガス中の酸素濃度[%])
理論空気量は、燃料を完全燃焼させるのに最低限必要な空気量で、理論酸素量を0.21(乾き空気中の酸素の体積割合)で割って求めます。実際には空気を少し多めに送り、その倍率が空気比です。空気比が小さすぎると不完全燃焼ですすが出て、大きすぎると排ガスが持ち去る熱が増えます。理論空気量などを求める計算は、免許規程で一級から加わる「燃焼理論」に当たります。二級の公表試験問題では、空気比の定義や A=mA0 の関係、大小による影響が正誤の形で問われています。
例題
重油だきボイラーの乾き排ガス中の酸素濃度が4.0%だった。空気比を求め、理論空気量が11.0㎥N/kgのときの実際空気量を求める。
- m = 21 ÷ (21 − 4.0) = 21 ÷ 17 ≒ 1.24
- A = m × A0 = 1.24 × 11.0 ≒ 13.6㎥N/kg
答え:空気比 約1.24、実際空気量 約13.6㎥N/kg
よくある間違い:21÷(21-O2)は、完全燃焼していて、燃料に窒素や酸素が含まれず、乾き排ガス中の窒素の割合を空気と同じ79%とみなした近似式です(J-Net21)。排ガスの酸素濃度が0%なら空気比は1.0で、酸素濃度が高いほど空気比は大きくなります。
作業主任者の伝熱面積の数え方関係法令
合計=(貫流ボイラー以外)+(貫流ボイラー×1/10)+(廃熱ボイラー×1/2) ※小規模ボイラーは算入しない。電気ボイラーは60kW=1㎡で換算
ボイラー取扱作業主任者に必要な免許は、取り扱うボイラーの伝熱面積の合計で決まります。25㎡未満なら二級以上、25㎡以上500㎡未満なら一級以上、500㎡以上なら特級です(貫流ボイラーのみの場合を除く)。合計するときだけ、貫流ボイラーと廃熱ボイラーを小さく数えます(ボイラー則 第24条)。
例題
1つの事業場で、炉筒煙管ボイラー(伝熱面積10㎡)1基、貫流ボイラー(伝熱面積70㎡)2基、電気ボイラー(最大電力設備容量360kW)1基を取り扱う。どれも小規模ボイラーには当たらない。作業主任者に必要な免許を求める。
- 貫流ボイラー = 70 × 2 × 1/10 = 14㎡
- 電気ボイラー = 360 ÷ 60 = 6㎡
- 合計 = 10 + 14 + 6 = 30㎡
- 30㎡は「25㎡以上500㎡未満」に当たる
答え:一級ボイラー技士以上が必要(二級では選任できない)
よくある間違い:電気ボイラーの換算は令和5年12月18日から60kW=1㎡です。改正前の20kW=1㎡で計算すると360kWが18㎡になり、合計42㎡になります。古い教材の値に注意します。
圧力計の目盛範囲と安全弁の調整圧力関係法令
圧力計の最大指示値:最高使用圧力×1.5以上、×3以下 / 安全弁が2個以上:1個は最高使用圧力以下、他は最高使用圧力×1.03以下
圧力計(温水ボイラーは水高計)の最大指示値は、最高使用圧力の1.5倍以上3倍以下と構造規格が定めています(第66条・第67条)。安全弁は最高使用圧力以下で作動するよう調整しますが、2個以上あれば、1個を最高使用圧力以下にしたうえで残りを3%増以下にできます(ボイラー則 第28条)。
例題
最高使用圧力0.8MPaの蒸気ボイラーに、圧力計と安全弁2個を取り付ける。圧力計の最大指示値の範囲と、安全弁の調整圧力の上限を求める。
- 圧力計の最大指示値の下限 = 0.8 × 1.5 = 1.2MPa
- 圧力計の最大指示値の上限 = 0.8 × 3 = 2.4MPa
- 安全弁の1個目 = 0.8MPa以下
- 安全弁の2個目 = 0.8 × 1.03 = 0.824MPa以下
答え:圧力計は最大指示値1.2〜2.4MPaのもの。安全弁は1個を0.8MPa以下、もう1個を0.824MPa以下で作動するよう調整する
よくある間違い:3%増が認められるのは、安全弁が2個以上ある場合の2個目以降だけです。1個しかない場合は最高使用圧力以下で調整します。
よくある質問
換算蒸発量の式の2257とは何の数字ですか?
大気圧のもとで100℃の飽和水1kgを100℃の飽和蒸気にするのに必要な熱量(蒸発熱)で、単位はkJ/kgです。換算蒸発量は、実際に蒸気に与えた熱量をこの値で割って、100℃の水から蒸気をつくった場合の量に直したものです。
ゲージ圧力と絶対圧力の違いは?
ゲージ圧力は大気圧を0とした圧力で、圧力計が示す値です。絶対圧力は真空を0とした圧力で、ゲージ圧力に大気圧(標準大気圧101.325kPa)を足した値になります。ボイラー則の最高使用圧力はゲージ圧力です。
ボイラー効率の計算には低発熱量と高発熱量のどちらを使いますか?
問題文に示された発熱量を使います。どちらを使うかで効率の値が変わるため、条件に書かれた発熱量の種類と単位を確かめてから計算します。
作業主任者の選任で、貫流ボイラーの伝熱面積はどう数えますか?
伝熱面積に10分の1を掛けた値で数えます。廃熱ボイラーは2分の1、小規模ボイラーは算入しません。この数え方は作業主任者の選任区分を決めるときだけのもので、ボイラー室の設置義務など他の規定には使いません。
例題の数値はすべて当サイトが作成したもので、過去の試験問題の本文・数値は使用していません。