二級ボイラー技士/ボイラーの構造に関する知識

熱と蒸気・伝熱の基礎

ゲージ圧力と絶対圧力、顕熱と潜熱、飽和蒸気と過熱蒸気、伝熱と水の循環まで、構造科目の最初に出る熱と蒸気の基礎を1本にまとめました。

ゲージ圧力と絶対圧力はどう違う?

ゲージ圧力は大気圧を0として測った圧力で、絶対圧力は完全な真空を0として測った圧力です。両者の関係は絶対圧力=ゲージ圧力+大気圧で、標準大気圧は101.325kPa、およそ0.1MPaです。

ボイラーの圧力計は、大気に開いた状態で針が0を指すように作られています。読んだ値はゲージ圧力なので、圧力計が0.5MPaを指していれば絶対圧力は約0.6MPaです。蒸気表は絶対圧力で書かれているため、表を引くときは0.1MPaを足してから探します。

圧力の単位はパスカル(Pa)で、1MPaは1,000kPaです。古い資料や古い機器には kgf/cm² の目盛りが残っていることがありますが、試験も現在の法令もMPaで表します。

顕熱と潜熱は何が違う?

顕熱は物の温度を上げるのに使われる熱で、潜熱は温度を変えずに状態を変えるのに使われる熱です。水を大気圧のもとで加熱すると、100℃までは温度が上がり(顕熱)、100℃で沸騰している間は温度が一定のまま蒸気に変わっていきます(潜熱)。

水の比熱は約4.2kJ/(kg・K)で、1kgの水を1K上げるのに約4.2kJが要ります。これに対して、100℃の水1kgを全部蒸気にするには約2,257kJが必要です。20℃から100℃まで温める熱の7倍近い熱が、温度計には現れない形で蒸気に入っています。

蒸気が暖房や加熱に使われるのは、この潜熱を凝縮のときに放出させられるからです。

加えた熱量(kJ/kg)温度(℃)20℃100℃顕熱約336kJ/kg(20℃→100℃)潜熱(蒸発熱)約2,257kJ/kg飽和水湿り蒸気(温度は100℃のまま)乾き飽和蒸気過熱蒸気標準大気圧のもと。水平部分(潜熱)は顕熱部分の7倍近い長さ(水の比熱4.2kJ/(kg・K)で計算)
20℃の水を大気圧で加熱したときの温度と熱量。沸騰中は熱を加えても温度が上がらない

例題:20℃の水100kgを、大気圧のもとで100℃の乾き飽和蒸気にする熱量を求める

水の比熱4.2kJ/(kg・K)、100℃での蒸発熱2,257kJ/kg、熱損失なし(計算用に丸めた値)

  1. ① 顕熱(20℃→100℃) 100×4.2×(100−20)=33,600kJ 温度差は80K
  2. ② 潜熱(100℃の水→蒸気) 100×2,257=225,700kJ 温度は100℃のまま
  3. ③ 合計 33,600+225,700=259,300kJ

答え:259,300kJ(うち約87%が潜熱)

よくある間違い:潜熱を足し忘れて33,600kJとする誤りが多い。問題文が「蒸気にする」のか「沸点まで温める」のかを先に確かめる。

飽和蒸気と過熱蒸気はどう違う?

飽和蒸気は、その圧力の飽和温度で水と共存している蒸気です。水滴を含むものを湿り蒸気、水滴を含まないものを乾き飽和蒸気といいます。乾き飽和蒸気を同じ圧力のまま加熱すると、温度が飽和温度より上がって過熱蒸気になります。

飽和温度は圧力が高いほど高くなり、蒸発熱は圧力が高いほど小さくなります。圧力を上げていくと、約22.1MPa(絶対圧力)、約374℃の臨界点で蒸発熱は0になり、水と蒸気の区別がなくなります。

飽和温度その圧力で水が沸騰する温度。標準大気圧で100℃
乾き度湿り蒸気の全質量に対する蒸気の質量の割合。0.95なら水滴が5%
過熱度過熱蒸気の温度と、その圧力の飽和温度との差
臨界点蒸発熱が0になる点。水では約22.1MPa(絶対圧力)、約374℃

比エンタルピは何を表す?

比エンタルピは、質量1kgの水や蒸気が持っている熱量で、単位はkJ/kgです。蒸気表では0℃の水をほぼ0として、圧力や温度ごとに値が並んでいます。

飽和蒸気の比エンタルピは、飽和水の比エンタルピに蒸発熱を足した値です。標準大気圧では飽和水が約419kJ/kg、蒸発熱が約2,257kJ/kg、乾き飽和蒸気が約2,676kJ/kgです。過熱蒸気には過熱の分の熱が加わるので、同じ圧力の乾き飽和蒸気より比エンタルピが大きくなります。

ボイラーが水に与えた熱量は、発生蒸気の比エンタルピから給水の比エンタルピを引いて求めます。仮に発生蒸気が2,780kJ/kg、給水が80kJ/kgなら、蒸気1kgあたり2,700kJを水に与えた計算です。給水の温度を上げると、この差が小さくなって燃料が節約できます。

熱はどうやって伝わる?

熱の伝わり方は、熱伝導、熱伝達(対流)、放射の3つです。熱伝導は固体の中を高温側から低温側へ熱が移ること、熱伝達は流れている流体と固体の壁との間の熱の移動、放射は電磁波で空間を越えて熱が伝わることです。物体が放射する熱量は、その絶対温度の4乗に比例します。

ボイラーの伝熱面では、燃焼ガスから壁へ(熱伝達と放射)、壁の中(熱伝導)、壁から水へ(熱伝達)と熱が移ります。この一連の流れを熱貫流(熱通過)といいます。炉壁の水管のように火炎を直接受ける面を放射伝熱面、煙管のように燃焼ガスの流れで熱を受ける面を対流伝熱面(接触伝熱面)と呼びます。

すすやスケールは熱を伝えにくく、薄く付いただけで熱貫流を大きく妨げます。

ボイラー水はなぜ循環する?

水管ボイラーでは、加熱されて気泡を含んだ軽い気水混合物が上昇管を上がり、加熱の弱い降水管では重い水が下がります。この密度の差で生まれる流れが自然循環です。

循環が良いと伝熱面が常に水でぬれて冷やされ、管壁の温度は水温に近く保たれます。循環が悪いと管の中に蒸気がたまり、管壁が過熱して膨出や破裂の原因になります。圧力が高くなると水と蒸気の密度差が小さくなり、自然循環が弱まるので、高圧のボイラーではポンプで水を送る強制循環式が使われます。循環水量を蒸発量で割った値を循環比といいます。

燃焼ガス加熱が強い側上昇管(気水混合物)降水管(水)蒸気ドラム水ドラム蒸気取出し上昇管の軽い気水混合物と、降水管の重い水との密度差で循環する圧力が高いほど水と蒸気の密度差は小さく、自然循環は弱まる
水管ボイラーの自然循環。加熱の強い側の管を上がり、弱い側の管を下がる

職場ではどう使う?

炉筒煙管ボイラーの圧力計が0.7MPaを指しているとき、絶対圧力は約0.8MPaで、蒸気表で引くと飽和温度は約170℃です。蒸気ヘッダの温度計が170℃付近なら、送っているのはほぼ飽和蒸気だと判断できます。

蒸気配管の保温材がはがれた箇所では、蒸気が潜熱を失って凝縮し、ドレンが増えます。蒸気トラップからの排出が急に増えたとき、まず保温の破損を疑うのはこの熱の流れを知っているからです。

試験ではどう問われる?

正誤問題では、対になる語を入れ替えた選択肢がよく作られます。顕熱と潜熱の説明の入れ替え、ゲージ圧力と絶対圧力の足し算と引き算の入れ替え、「圧力が高いほど蒸発熱は大きい」のような増減の逆転が代表的な型です。

数値では、100℃の蒸発熱(約2,257kJ/kg)と飽和水の比エンタルピ(約419kJ/kg)の取り違えを誘う選択肢に注意します。伝熱では熱貫流・熱伝達・放射の定義の入れ替え、循環では密度差と圧力の関係の逆転がねらわれます。

よくある質問

ゲージ圧力に0.1MPaを足すのはなぜ?

圧力計は大気圧を0として目盛られているためです。絶対圧力は真空を0とするので、標準大気圧の101.325kPa(約0.1MPa)を足すと絶対圧力になります。

圧力が高いほど蒸発熱が小さくなるのはなぜ?

圧力が高いほど飽和温度が上がり、水と蒸気の性質の差が小さくなるためです。臨界点(約22.1MPa、約374℃)では差がなくなり、蒸発熱は0になります。

二級の試験で蒸気表の数値を覚える必要はある?

表の細かい値より、標準大気圧で飽和温度100℃、蒸発熱約2,257kJ/kgという代表値と、圧力による増減の向きを押さえるほうが役に立ちます。計算問題では比熱や蒸発熱は問題文で与えられます。

読んだあとにやること

読んで分かった気になっても、手を動かすと止まります。この分野の練習問題で確かめてください。

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解説と例題は学習用に当サイトが作成したものです。例題の数値はすべてオリジナルで、過去の試験問題の本文・選択肢・数値は使用していません。 最新の法令と試験の内容は公益財団法人 安全衛生技術試験協会の公式情報で確認してください。