二級ボイラー技士/燃料及び燃焼に関する知識
燃料の種類と性質
重油・ガス・石炭の性質の違いと、引火点・着火温度・発熱量の定義、重油の成分が起こす障害を1本にまとめました。
燃料の性質はどんな分析で表す?
燃料の性質は、固体燃料なら工業分析、液体燃料と固体燃料は元素分析、気体燃料は成分分析で表します。どの分析を使うかは、燃料の形でほぼ決まります。
工業分析は石炭などに使う方法で、水分・灰分・揮発分を測り、100%からそれらを差し引いた残りを固定炭素とします。固定炭素は直接測らない、という点が問われます。固定炭素を揮発分で割った値が燃料比で、燃料比が大きい石炭ほど着火しにくく、火炎は短くなります。
元素分析は、炭素・水素・窒素・硫黄などの元素が質量で何%含まれるかを示します。気体燃料の成分分析は、メタン・エタン・プロパンなどの成分を体積の割合で表します。液体と固体は質量、気体は体積という単位の違いが、そのまま誤りの選択肢の材料になります。
| 工業分析 | 固体燃料の水分・灰分・揮発分を測り、残りを固定炭素とする |
|---|---|
| 元素分析 | 液体・固体燃料の炭素・水素・窒素・硫黄などを質量%で表す |
| 成分分析 | 気体燃料のメタン・プロパンなどの成分を体積%で表す |
引火点と着火温度はどう違う?
引火点は、燃料を加熱して小さな炎を近づけたときに燃え出す最低の温度です。着火温度(発火温度)は、炎を近づけなくても、加熱されただけで自ら燃え出す最低の温度です。
液体燃料では、着火温度のほうが引火点よりずっと高くなります。引火点は貯蔵や取扱いのときの火災の危険の目安で、低いほど危険です。
着火温度は燃料の種類だけでは決まらず、加熱の速さや周りの空気の状態などの条件で変わります。同じ燃料でも資料によって値に幅があるのはこのためです。
高発熱量と低発熱量の差は何で決まる?
高発熱量は、燃焼で生じた水蒸気の潜熱まで含めた熱量で、総発熱量ともいいます。低発熱量は高発熱量から水蒸気の潜熱を差し引いた値で、真発熱量ともいいます。低発熱量は必ず高発熱量より小さくなります。
水蒸気のもとは、燃料中の水素が燃えてできる水と、燃料にもともと含まれる水分です。水素と水分が多い燃料ほど、二つの差は大きくなります。気体燃料は水素の割合が大きいので、差は液体燃料や石炭より大きくなります。
発熱量の単位は、固体と液体では燃料1kg当たり(MJ/kg)、気体では標準状態の1m³当たり(MJ/m³N)で表すのが一般的です。低発熱量を数値で求める計算は一級の範囲ですが、差が生まれる理由を一度数字で追うと、定義を取り違えにくくなります。
例題:高発熱量から低発熱量を求める
ある液体燃料の高発熱量は43.5 MJ/kg。この燃料1kgを燃やすと水蒸気が1.3 kgできる。水蒸気の潜熱を2.5 MJ/kgとして低発熱量を求める(数値はこのサイトのオリジナル)。
- ① 水蒸気の潜熱の合計 1.3 kg × 2.5 MJ/kg = 3.25 MJ 燃料1kg当たり
- ② 高発熱量から差し引く 43.5 − 3.25 = 40.25 MJ/kg
答え:約40.3 MJ/kg
よくある間違い:潜熱を足すと46.75 MJ/kgになり、高発熱量より大きな値が出てしまいます。答えが高発熱量より小さいかを最後に確かめてください。
A重油とC重油では性質がどう違う?
重油は日本産業規格(JIS K 2205)で1種(A重油)、2種(B重油)、3種(C重油)に分けられています。A重油からC重油に進むほど、密度と粘度が大きくなります。
単位質量当たりの発熱量は、密度の小さいA重油のほうがC重油より大きくなります。引火点の規格は、1種と2種が60℃以上、3種が70℃以上です。C重油は成分の大部分が蒸留残さ油で、残留炭素分や硫黄分が多くなりやすく、残留炭素分の多い油ほどばいじんが増えます。
温度が上がると、重油の密度と粘度はどちらも小さくなります。B重油とC重油は常温では粘度が高いので、送油とバーナでの霧化のために加熱して粘度を下げます。流動点は、油を冷やしていったときに流動できる最低の温度で、寒い時期に送油できるかどうかの目安になります。
重油の成分はボイラーにどんな障害を起こす?
障害は、成分ごとに起こる場所がおおよそ決まっています。硫黄分は燃えて硫黄酸化物になり、排ガスの温度が下がるエコノマイザや空気予熱器で硫酸となって低温腐食を起こします。灰分に含まれるバナジウムの化合物は、過熱器など温度の高い伝熱面に付いて高温腐食を起こします。
水分が多いと、蒸発に熱を取られて熱損失が増え、火炎が断続するいきづき燃焼の原因にもなります。スラッジはストレーナやバーナチップを詰まらせ、ポンプや弁を摩耗させます。残留炭素分の多い油は、ばいじんを増やします。
| 硫黄分 | 硫黄酸化物の発生、エコノマイザ・空気予熱器の低温腐食 |
|---|---|
| バナジウム(灰分) | 過熱器など高温部の高温腐食 |
| 水分 | 熱損失の増加、いきづき燃焼 |
| スラッジ | ストレーナ・バーナチップの詰まり、ポンプや弁の摩耗 |
| 残留炭素分 | ばいじんの増加 |
液体・気体・固体燃料にはどんな特徴がある?
液体燃料は発熱量が大きく、品質がほぼ一定で、貯蔵や運搬がしやすい燃料です。燃焼温度が高いので、炉壁の局部過熱に注意がいります。
気体燃料は空気と混ざりやすく、少ない空気比で完全燃焼させられます。燃焼の調節が簡単で、灰分をほとんど含まないので、ばいじんもわずかです。LNGは液化の前に硫黄分などが取り除かれていて、硫黄酸化物をほとんど出しません。
気体燃料で注意がいるのは漏れたときです。天然ガスを主な原料とする都市ガスの主成分メタンは空気より軽く、上のほうにたまります。LPGの主成分プロパンやブタンは空気より重く、床やピットにたまります。同じ熱量を得るのに必要な体積が液体燃料よりずっと大きいため、配管も太くなります。
石炭は、炭化度が進むほど固定炭素が増え、揮発分が減ります。褐炭より瀝青炭、瀝青炭より無煙炭のほうが燃料比が大きく、着火しにくい燃料です。揮発分の多い石炭は着火しやすく、長い火炎をつくります。
職場ではどう使う?
A重油をたく炉筒煙管ボイラーを受け持つと、納入のたびに燃料の性状表を受け取ることがあります。見るのは密度、動粘度、引火点、硫黄分、水分です。硫黄分の多い油に切り替わった月は、エコノマイザ出口の排ガス温度を下げすぎていないかを日誌で確かめます。
油タンクの底には水やスラッジがたまります。月1回の定期自主検査に合わせてドレン弁から抜き、水の量や濁りを記録しておくと、ストレーナの詰まりやいきづき燃焼が起きたときに原因を追いやすくなります。
都市ガスとLPGを両方使う工場では、ガス漏れ警報器を付ける高さが違います。メタンは天井付近に、LPGは床付近にたまるので、警報器もそれぞれの位置に付けます。
試験ではどう問われる?
定義の入れ替えが中心です。引火点と着火温度の説明を入れ替える、高発熱量と低発熱量の「潜熱を含む・含まない」を逆にする、工業分析で固定炭素を直接測るように書く、といった誤りの選択肢が作られやすい形です。
重油では、「C重油のほうがA重油より単位質量当たりの発熱量が大きい」「温度が上がると粘度が大きくなる」のように大小を逆にした記述が典型です。成分の障害では、硫黄分とバナジウムの役割や、低温腐食と高温腐食の場所の入れ替えが狙われます。気体燃料では、メタンとLPGの重さを逆にした記述に注意してください。
よくある質問
引火点と着火温度はどちらが高いですか?
液体燃料では着火温度のほうが高くなります。引火点は小さな炎を近づけて燃え出す温度、着火温度は炎がなくても自ら燃え出す温度です。
A重油とC重油はどちらが発熱量が大きいですか?
単位質量当たりでは、密度の小さいA重油のほうが大きくなります。安全衛生技術試験協会の公表試験問題でも、この大小が正しい記述として扱われています。
低温腐食と高温腐食の原因は何ですか?
低温腐食は燃料中の硫黄分からできる硫酸、高温腐食は灰分に含まれるバナジウムの化合物が主な原因です。低温腐食はエコノマイザや空気予熱器、高温腐食は過熱器などで起こりやすくなります。
読んだあとにやること
読んで分かった気になっても、手を動かすと止まります。この分野の練習問題で確かめてください。
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解説と例題は学習用に当サイトが作成したものです。例題の数値はすべてオリジナルで、過去の試験問題の本文・選択肢・数値は使用していません。 最新の法令と試験の内容は公益財団法人 安全衛生技術試験協会の公式情報で確認してください。